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“目の前の仕事”から“これからのキャリア”へ——ジョブ・カードで育まれるキャリア意識

日々の業務へ向き合うことに精一杯で、自身のキャリアや職場の中でどのような役割を担いながら働いていくのかまで整理する機会が少ない——これは、さまざまな職場に共通する課題なのかもしれません。保育・幼児教育と子育て支援を担う社会福祉法人花園福祉会では、こうした課題意識を背景にセルフ・キャリアドックを導入し、ジョブ・カードを活用したキャリア支援に取り組んできました。そんな活動の中で、職員の意識や行動にどのような変化が生まれたのかを紹介します。

投稿日:2026年2月13日

目次

セルフ・キャリアドック導入の背景

社会福祉法人花園福祉会は埼玉県深谷市を拠点に、地域の子育て支援や保育サービスを展開している法人です。保育・幼児教育施設や学童、地域子育て支援センターなどを運営し、1972年の法人認可以来、子どものこころと体の育ちに寄り添ってきました。

同法人では、保育の質の向上とあわせて、職員が長く働き続けられる職場づくりにも注力しています。その取り組みの一環として、2022年からセルフ・キャリアドックを導入しています。

セルフ・キャリアドックとは、企業が人材育成の方針に基づき、キャリアコンサルティング面談やキャリア研修等を通じて、主体的なキャリア形成を行えるよう体系的・継続的に支援する仕組みです。同法人では導入に伴い、ジョブ・カードの活用も開始しました。

この取り組みを進めるに至った経緯について、花園福祉会が運営する花園第二こども園の園長で、キャリアコンサルタントでもある髙木早智子さんは次のように振り返ります。

髙木さん
「以前は、各施設長が中心となって運営するトップダウン型の組織でした。しかし、この先、各施設長が定年を迎えて世代交代が進んだときに、職員が指示を待つだけの組織のままでは立ち行かなくなるのではないかという危機感がありました。そこで、役職にかかわらず、職員一人ひとりが日々の保育だけでなく、職場運営や制度設計といった組織づくりにも主体的に関われる体制を整える必要があると考えるようになりました。その取り組みの一つとしてセルフ・キャリアドックを導入し、キャリアコンサルティングやキャリア研修とあわせて、ジョブ・カードを活用しています。
また、セルフ・キャリアドックの運用にはキャリアコンサルタントの関与が欠かせないと知り、導入前に私自身が国家資格キャリアコンサルタントを取得しました。その後、実際に職員のキャリア形成支援に携わるなかで、より専門的なスキルを身につける必要性を感じ、2級キャリアコンサルティング技能士の資格も取得して、より質の高い支援につなげています」
 

ジョブ・カードの活用方法と効果

花園福祉会では、2022年度からセルフ・キャリアドックを開始しました。初年度の全職員対象を皮切りに、その後も、新入職員の受け入れ時をはじめ、昇進やリーダークラスへの移行時、産休・育休などのライフイベントといったキャリアの節目、さらにシニア層向けキャリア研修における面談時など、さまざまなタイミングで継続的にキャリアコンサルティングを実施しています。

セルフ・キャリアドックではまず職員が、その中核ツールであるジョブ・カードを各自で記入します。使用するのは、キャリアプランを明確にする「キャリア・プランシート(様式1-11-2)」、職業経験を振り返る「職務経歴シート(様式2)」、保有する免許や資格を整理する「職業能力証明シート(様式3-1)」、学習歴・訓練歴を整理する「職業能力証明シート(様式3-2)」といった様式です。

《「キャリア・プランシート(様式1-11-2」、「職務経歴シート(様式2」、「職業能力証明シート(様式3-1」、「職業能力証明シート(様式3-2」の作成はこちら》

それぞれの記入内容をもとに、働く人が自己理解を深め、具体的なキャリアプランを立てられるようにキャリアコンサルタントが支援します。この支援を導入初年度は外部機関が行い、その後は専門資格を取得した髙木さんが担当しています。

髙木さんは、ジョブ・カードの記入がうまくいかない職員に対しては、キャリアコンサルティングを通じて内容を整理しながら記入を進められるようにするなど、無理なく取り組めるよう工夫しているといいます。

髙木さん
「キャリアコンサルティングでは、例えば、日々の業務のなかで『うまくいったこと』と『困難だったこと』の双方を振り返ります。うまくいったことからは本人の強みを確認し、困難だったことについては、その時にどう考え、どのように乗り越えてきたのかを丁寧に聞いていきます。そうした対話を重ねることで、これまで培ってきた力や今後伸ばしていきたい点が整理されると感じています」

ジョブ・カードを作成すると、これまでの仕事の経験やスキル、学習歴を振り返り、今後のキャリアについて考えを整理することができます。花園福祉会でも活用を始めて以降、職員の意識や行動に変化が見られるようになりました。

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髙木さん
「保育の仕事に従事する人は、日々子どもと向き合い、保育の実践に力を注ぐことが中心となるため、これまでの経験が今後どのような成長につながり、組織でどういった役割を担うことにつながっていくのかというキャリアの観点で捉える機会が少ないという側面があります。セルフ・キャリアドックを導入し、ジョブ・カードを活用することで、職員の視野が広がったと感じています」

このように、自身が組織の中でどのような役割を担い、将来どのように関わっていくのかを考える視点を持つ職員が現れ始めると、今後の働き方について考える職員も増えました。

髙木さん
「これまでは、職場の中でどのような役割を担いながら働いていくのかを整理する機会が少なく、組織づくりに対する意識、また役職が上がると組織をマネジメントする立場になるという認識を持つ人が限られていました。しかし、セルフ・キャリアドックを導入し、ジョブ・カードを活用することで、組織をより良くするためにいま自分に何ができるのか、将来リーダーになるまでに何を学ぶ必要があるのかを考え、行動に移そうとする姿が見られるようになっています」

ジョブ・カードに関する職員からの声

ジョブ・カードを作成した職員からは、実際にこのような声が寄せられています。

 ・振り返りができて、改めて今後のことを考えやすくなった

 ・業務に向き合うことで、園での活動を自分事として捉えられるようになった

 ・就業してきた中で得たものを客観視でき、将来の生き方を適切に見つめる機会になった

 ・文章にすることで、考えを整理できた

 ・これまでの自分を客観的に見つめ、強みや弱みを把握できた

主体的に働き方を考えるための土台となるジョブ・カード

このようにジョブ・カードは、自身のこれまでの経験を振り返り、今後の働き方やキャリアについて主体的に考えるための土台となります。

花園福祉会では今後、これまで実施してきたシニア層向けキャリア研修に加え、20~30代の職員を対象としたキャリア研修も予定しており、その際にもジョブ・カードを活用していく方針だといいます。

髙木さん
「女性職員が多い保育現場では、ワークライフバランスの充実や、長く働き続けられる環境づくりが不可欠です。特に20~30代の職員は、出産や育児休業などライフイベントによって働き方に変化が生じやすい時期でもあります。そうした節目ごとに自身の状況や今後を整理するツールとして、今後もジョブ・カードが環境づくりを支えてくれることを期待しています」

お話を伺ったキャリアコンサルタント

髙木早智子さん
国家資格キャリアコンサルタント、2級キャリアコンサルティング技能士、産業カウンセラー。民間企業勤務を経て、1998年に社会福祉法人花園福祉会へ入職。2002年、花園第二保育園(現・幼保連携型認定こども園 花園第二こども園)園長に就任し、現在に至る。法人内ではセルフ・キャリアドックの担当として、職員のキャリア形成支援に携わっている。

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