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定年後は再就職、それとも再雇用? ジョブ・カードで見えてくる!

40代や50代は、少しずつ定年や定年後の生活を意識し始める時期です。定年後は別の職場や業種で働きたいとなれば心構えや準備が必要になってきますし、再雇用を目指すとしても、業務内容などは心配なところでしょう。「まだ定年後のイメージがわかない」「定年後も働けるのか自信がない」など、定年後の姿があまりイメージできないのも本音としてあるかもしれません。そこで、定年後も働き続ける場合どんな選択肢があるのか、一度考えてみませんか? この記事では、定年後の再就職と再雇用の選び方について説明します。

投稿日:2023年3月9日

目次

再就職と再雇用の違い

まずは、再就職と再雇用の違いについて確認しておきましょう。再就職とは元々勤めていた企業とは別の企業へ就職すること、再雇用とは元々勤めていた企業を一度退職し、同じ企業で改めて雇用契約を結ぶことです。なお、今勤めている企業で退職せずに働き続けることは、再雇用とは別に勤務延長と呼ばれています。

定年を意識し始めた40代女性のTさんに話を聞いてみたところ「定年後も今の職場にいるイメージがつかず、新たな環境で再出発したいけれど、20代で一度転職して以来、同じ職場しか知らないので少し不安」という声がありました。

まずはどのような違いがあるのか理解した上で、再就職を選んだ方がいいのか再雇用を選んだ方がいいのか、自身の状況に合わせて選んでいく必要があります。

高年齢者雇用の現状を確認してみよう

まずは高齢者雇用の現状について確認してみましょう。令和4年「高年齢者雇用状況等報告」の内容から、重要なポイントを紹介します。

高年齢者が活躍できる環境整備を図る法律

定年というと、何歳のイメージをお持ちでしょうか。

それがわかるのが、「高年齢者雇用安定法(高年齢者等の雇用の安定等に関する法律)」です。働く意欲のある高年齢者がその能力を十分に発揮できるよう環境整備を図っていくために改正され、令和3年4月1日に施行されています。

改正後では、元々義務となっていた65歳までの雇用確保措置に加え、65歳から70歳までの就業機会を確保する措置が、努力義務として新設されました。

高年齢者雇用安定法の改正イメージ

このように、近年では65歳を超えた人も、希望すれば働ける環境の整備が進められています。現在働いている企業の人事制度上、70歳までの定年の引き上げが行われなくとも、再雇用や勤務延長などの就業確保措置がとられることもあるのです。

現在の高年齢者雇用の状況は?

では実際に高年齢者で雇用されている人はどれくらいいるのでしょうか。令和4年「高年齢者雇用状況等報告」(厚生労働省)によると、令和4年の60歳以上の常用労働者(※)は、31人以上の従業員がいる企業で441.7万人でした。平成21年では216.0万人だったため、この13年で約2倍に増加しています。
※常用労働者は、1年以上継続して雇用される者(見込みを含みます。)のうち、1週間の所定労働時間が 20 時間以上の者をいいます(正社員の他、契約社員、パート労働者等も含みます。)。

60歳以上の常用労働者の推移を示すグラフ

また、60歳定年到達者の動向を見ると定年到達者の87.1%が、継続的に雇用されました。継続雇用を希望しない定年退職者も一定数見受けられますが、おおむね継続雇用されているのが現状です。

60歳定年企業における定年到達者の動向を示すグラフ

60歳以上で転職したい人の割合は?

今の企業で働き続けるのではなく別の企業に転職したいという人の、60歳以上における割合についても見てみましょう。

令和2年転職者実態調査の概況」(厚生労働省)によると、「機会があれば転職したい」と答えた人の割合が、60歳~64歳で15.0%、65歳以上で5.0%となっています。なお、「今の職場で今後も働きたい」人は60歳~64歳で60.7%、65歳以上においては全年齢階級の中でも一番高い、66.2%という数字となりました。

今後の転職希望者数を示す表

定年後に再就職を選ぶメリットや注意点

再就職と再雇用はそれぞれメリットや注意点が異なるため、自分の望むライフスタイルに合うほうを選ぶのがおすすめです。まず定年後の再就職では、以下のようなメリットや注意点があります。

メリット:やりたかった仕事に就ける可能性がある

再就職は心機一転、所属していた企業の業務内容や業種に縛られることなく、これまでとは違う仕事や業種などにチャレンジすることも可能です。定年後はそこまで収入にこだわらなくても良いという場合は、選択の幅も広がるかもしれません。これからやりたいことがある場合や、何らかの理由でこれまでの仕事を継続したくなかったり、できなかったりする場合に向いているでしょう。

例えば40代男性のSさんは「今後も転職する可能性があるため、定年時点で何の仕事を行っているのかがわからない」と思いながらも、「定年後の生活費を、そのとき20代になる子どもに頼る訳にもいかないので、今の仕事が続けられなかったとしても、何らかの収入源はほしい」と考えているとのこと。今の仕事に限らず継続して働きたいなら、再就職を選ぶ可能性もありそうです。

デメリット:改めて就職活動を行う必要がある

再就職では改めて職場を選ぶため、就職活動を行う必要があります。定年間近だと就職活動から長く離れていることが多いため、うまく就職活動を進めるのが難しい場合もあるかもしれません。

また、これまでのキャリア次第で、キャリアアップできる可能性がある一方で、応募できる仕事が限られたり、採用のハードルが高かったりなど、思ったよりもうまくいかないといった事態になってしまう可能性もあります。

定年後に再雇用を選ぶメリットや注意点

次に再雇用におけるメリットや注意点も説明します。

メリット:なじみのある職場で働き続けられる

再雇用は、これまで働いているなじみの職場で働き続けられる点がメリットです。大きく環境が変わる可能性が低いため、環境の変化が不安な方に向いているでしょう。また、現役時代に培った経験やスキルを定年後も発揮することができます。

60代男性のKさんは、2年前に再雇用を選択しました。「これまで担当した業務を引き続き担っています。体調への不安もありましたが、勤務日数や勤務時間が減ったので働き続けられそうです」とのこと。年齢に合った働き方ができているようです。

デメリット:賃金、勤務形態、業務内容が変わる可能性がある

一旦退職して新しく雇用契約を結ぶにあたって、一般的には賃金が低下してしまいます。

また、再雇用になると勤務形態や業務内容が変更されることがあり、中にはこれまでとまったく違った業務内容になる可能性もあります。職場での立場も変わるかもしれず、これまで部下だった職員が上司になるといった状況も考えられます。

上記のKさんは業務内容が変わらず、その上で雇用日数や勤務時間が減ったことで、無理なく働けるというメリットがあったようです。しかし再雇用により変更された業務内容や環境が合わなかった人は、不満がたまってしまうこともあるでしょう。

再就職か再雇用か迷ったら、ジョブ・カードを使ってみよう

厚生労働省が様式を定めたジョブ・カードは、これまでに得たスキルや経験などを整理し、キャリアプランを検討する際に役立つツールです。具体的には、以下のような使い方が可能です。

キャリアの棚卸しができる

ジョブ・カードの「職務経歴シート(様式2)」や「職業能力証明シート(様式3)」を使えば、これまでのキャリアの棚卸しが行えます。自分が得てきた経験やスキルを再確認することで、定年後の自分の働き方や働く場所をより具体的にイメージできるでしょう。

様式2「職務経歴シート」の記入例より抜粋した画像

今後のキャリアプランを明確にできる

上記の様式に加えて「キャリア・プランシート(様式1)」を使うと、今後のキャリアプランをより明確にできます。これまで積んできた長いキャリアをどう評価し、自分の価値観やライフスタイルも踏まえ定年後にどんな選択肢があるか、キャリアの専門家であるキャリアコンサルタントにジョブ・カードを見てもらいながらキャリアコンサルティングを受けてみるのもいいでしょう。

様式1-1「キャリア・プランシート(就業経験がある方用)」の記入例より抜粋した画像

人生100年時代といわれる現在、定年を迎える前に、これまでのキャリアを振り返り、スキルや能力の棚卸しをしてみることがおすすめです。それによって、自分に足りないスキルや、今後、身につけるべきスキルがわかるかもしれません。定年後のセカンドキャリアをより充実したものにするためにも、早いうちから、今後のキャリアプランを考えてみてはいかがでしょうか。

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