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自分の過去は「強みの宝庫」だった! 若者もミドルもシニアも、未来を何倍にも広げる「振り返り」のススメ

就職してから定年退職まで同じ会社で勤め、キャリアを会社に委ねるのが当たり前、というのは過去のこと。自分のキャリアを自分で切り開く時代がやってきたといわれています。新しい時代を生き抜くためには、どうすればいいのか。キャリア形成を支援する「キャリアコンサルタント」の植松晶子さんと竹島弘幸さんは、一人一人が自らを「振り返ること」が大事だと言います。その心は…?

投稿日:2025年6月17日

目次

強みがたくさんあるのに、それに気付いていない人が多い

リモートワークの採用や、雇用形態の多様化など、働き方を取り巻く環境は大きく変化してきています。そんな中、働く人たちは自らのやりがいや立脚点をどのように見つけていけば良いのでしょうか。

植松さん
「大学生など若い方と話していると“スキルを身に付けたい”という気持ちを感じることが多いです。自分が成長できないという状態への危機感があり、就職した先が成長しにくい環境だと感じたらすぐに転職を考えたりします。昔のように“安定した会社”を求めるのではなくて、“自分にスキルがあることが安定”なんですね。だから苦労しても、経験を積み上げていこうとしている人が多いです。

自分が成長できないことへの不安に加え、近年の独立行政法人 労働政策研究・研修機構(JILPT)の調査では、若者のキャリア意識の変容が報告されています。それは、正社員定着者(一つの企業に勤め続けている正社員)が、転職経験者よりも仕事にやりがいを見いだしにくくなっているということです。以下は若い正社員のキャリア別に現職への評価を調べた調査です。やりがいのある仕事だと思うか、自分の性格や能力にあっているか、など多くの項目で、転職者より定着者のほうが低い値になっています。2016年よりも2021年調査のほうがその傾向は顕著です」

グラフ 正社員のキャリア別・現職への評価

労働政策研究・研修機構「第5回 若者のワークスタイル調査」:25-34 歳層の若者について調査 回答数3244人

「転職をするべきだ、ということを言いたいわけではありません。ただ、このような結果が出る要因は、転職者は転職活動の過程で一度『自分に向いている仕事は何か、活かせる強みは何かを見つめ直す作業をしている』ことにあると考えられます。ここで強調したいのは、この『自分を見つめ直す』つまり『振り返る』という作業の大切さです。

自分の価値観や、何にやりがいを見いだすかは、自分の原体験に基づくものが多いといわれています。だから皆さんには、やったこと、感じたことを振り返る時間を定期的に持ってほしいと思います。

自分の人生は『強みの宝庫』。強みがたくさんあるのに、それに気付いていない人が多いんです。仕事だけがキャリアじゃないですよ。マイジョブ・カードの「キャリア・プラン作成補助シート」を活用して、働き始める前の時期も含めて、自分が何をしてきたか、まわりから何を求められてきたのかも含めて書き出してみる。何度か振り返って、修正点がなかったとしても、その時々で新しい発見や、気付きがあるものです。

それを繰り返すことで『自分が大事にしていること』や、『やりたいこと』が見えてきます。また、『自分に期待されていること』も見えてきます。これらは、モチベーションに大きく関わりますよね。正社員として長期的に定着する働き方をするにしても、転職をするにしても、自分にとってやりがいがあり、自分らしさが発揮でき、能力を高められるような環境を整える取り組みを、自ら行うことが大事です。そのために効果的なのが『振り返り』なんです」

何が強みか分からないという人は、ストーリーを思い浮かべるといい

一方で、ミドルやシニアの世代は、その「振り返り」が苦手な人が多いのだといいます。竹島さんは多くのミドル・シニア層と話をしてきた中で、この世代特有の傾向があると感じているそうです。

竹島さん
「今の時代のミドルやシニアの方たちは、今まで一つの会社しか体験してこなかった人が多いんですよね。転職を検討したことがある人も少なく、働く環境を変えるなんて無理だと思っている人が多い。でも、そういう人こそ、自らを振り返ってほしいと思います。

『何が得意か思い当たらない』っていう人もいるんです。でもどんな職種でも、長く働いてきた方には必ず強みがあるはずです。それを掘り返すためには、自分の『ストーリー』を思い浮かべていけばいい。

私はよくミドル・シニアの方には、『美しいものはなんでしょうか?』と訊くんです。そうすると答えられなかったりする。長年会社の中で、ロジックとエビデンスを求められる価値観の中でやってきたから、ロジカルでないものの価値がピンとこなかったりするんですよね。

でも、そこをあえて、美しい体験、いい体験だと感じたものを思い出してもらいます。『そういえば、営業職としてお客さまに喜んでもらったら嬉しかった。なぜ嬉しかったのか…』とたどっていって書き出してみる。経験は感情とセットで記憶されていることが多いんです。ポジティブな感情を思い出すことで、そこが自分の武器になる経験でもあることに気付ける、ということがあります。

この経験は、趣味の話でも構いません。休みの日に趣味を極めている人がその価値に気付いて、YouTuberの副業で成功した、なんていうケースもあります。自分のストーリーを思い出すことは、自分の強みを再発見するために有効なのです。ここでも、マイジョブ・カードを活用することができます」

自分を理解することは、相互理解、社会の成長につながる

キャリア・プラン作成補助シートは、自然と自分のキャリアを振り返られるように作られています。一通り入力して整理すれば、キャリア・プランシートへ展開することもできます。

自らを振り返ることは、働いている人はみんなやった方がいい、と二人は口を揃えます。自らを振り返ることで、自分の強みを周囲に説明しやすくなり他者との相互理解、信頼の醸成につながります。

植松さん
「マイジョブ・カードを使って振り返りをしていくと、将来についてもきちんとした視野を持てるようになります。自分には何ができるのか、今後どう働きたいのか、どんな仕事に取り組みたいのか、その実現のために、スキルをどう上げていけば良いのかを考える時間を持つことがとても大切です。それがキャリア形成のヒントになるんです。自分の価値観や強みを知ることで、成長して次のステップに行くことができます」

竹島さん
「いい体験をストーリーとして思い出し、自分のいろいろなスキルを再確認していくのが大事だと思います。ベンチャーの社長さんみたいに自分の行く道が見えていそうな人でも、話すと、多くの人は悩んでいたりするんですね。でも自らを振り返る作業をすることによって、自分の原点や他者との関係性を見直したり、意識が変わって先に進めたりするのを見たことがあります。健康診断と同じなんです。毎年1回、みんなでやるようにすればいい。必ずしも転職のため、じゃなくてもいいんです。キャリアを見直す意義について、みなさんに知ってほしいですね」

お話を伺ったキャリアコンサルタント

植松晶子さん
国家資格キャリアコンサルタント、ビジネスコーチ、外国人雇用労務士。人材確保コンサルタントとして中小企業の採用支援、組織内コミュニケーション活性化支援(マネージャー研修、キャリアセミナー、各種プロジェクト企画運営、キャリアコンサルティング、1on1導入など)に取り組む。ミドル・シニアのセカンドキャリア支援、外国人受け入れ支援、長野県立大学学生キャリア支援プロジェクト講師(2022年2月~現在)、(株)パソナ運営「ワークライフファシリテータ養成講座」セルフブランディング講座講師(2024年5月~現在)。

竹島弘幸さん
REBOOOT代表。1級キャリアコンサルティング技能士、国家資格キャリアコンサルタント、外国人雇用労務士。シニア向けリスキリング/若者支援(サポートステーション)/外国人雇用支援、日本デザイナー学院アプリPicoN!に「はたらくひとのポリフォニー」連載中。著作「黒澤明映画に学ぶ傾聴術」。前職のKDDIでは、auじぶん銀行の立ち上げ、執行役員、シンガポール・ミャンマー子会社でCOO、モンゴル子会社の戦略支援などに取り組む。

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