育児休業からの復帰をスムーズに!ジョブ・カード活用のススメ
育児休業から仕事に復帰するタイミングは、これまでのキャリアを振り返り、今後の働き方を見直す絶好の機会ですが、その際に役立つのがジョブ・カード。自身のキャリアや価値観を整理し、今後のプランを具体的に描くことで、育児休業からの復帰を円滑にすることができます。本稿では、女性のキャリア支援を中心に活動するキャリアコンサルタントの福島美智子さんに、実際の活用事例をもとにしたジョブ・カードの効果的な使い方について教えてもらいます。
投稿日:2025年12月16日
目次
育児休業取得の現状
育児休業は子育てと仕事を両立させるための大切な制度です。
調査によると、2023年の育児休業取得率は男性が約30%に対し女性は約84%となっています。期間についても、男性は約37%が2週間未満と短期間ですが、女性の約92%が6か月以上取得しています。多くの女性が、男性よりも長期間の育児休業を取得する現状から、福島さんに相談に来られるのも女性が多いと言います。
(厚生労働省「令和5年度育児休業取得率の調査結果公表、改正育児・介護休業法等の概要について」より)
制度の活用が進む中で、長期間にわたる育児休業を終え、仕事に復帰するときの相談を受けているキャリアコンサルタントの福島さんも、その相談の場で積極的にジョブ・カードを活用していると言います。

福島さん
「育児休業からの復帰に当たってはキャリアを見直すケースが多々あります。ジョブ・カードを使うことで、自分の考えを整理し、復帰に向け次の一歩を具体的に描けるようになるので、実際の相談事例をもとに活用方法をお伝えしたいと思います」
よくある相談とそれに対応したジョブ・カードの活用事例
ケース① 復帰のタイミングに迷っている
育児休業からの復帰時期をどう設定するかは、多くの方が迷うところでもあります。
福島さん
「育児休業を1年取るべきか、1年半にすべきか、それとも半年ほどで早めに復帰した方がいいのか——相談の現場では、迷いや焦りを感じる声が多い印象です。さらに保育園探しで、入園できるかどうか見通しが立たず、会社にどう復帰時期を説明すべきか悩む方もいます」
こうしたケースで有効なのが、ジョブ・カードの複数あるシートのうちのひとつ「キャリア・プラン作成補助シート(在職者用)」です。D-1〈将来取り組みたい仕事や働き方等〉の欄に今後のキャリアの希望を書き、D-2〈これから取り組むこと等〉にはその実現に向けた自身の行動や、周囲への働きかけを整理。加えて、D-3〈その他〉に課題として感じていることをまとめ、必要な場合にはキャリアコンサルティングを受け、解決を図ります。

福島さん
「相談に来られる方は、初出産の方が多く、子育てとの両立や復帰のプランに悩むことが多いです。D-1には“5年後/10年後/20年後”といった長期スパンで考える例が示されていますが、育児休業からの復帰タイミングを考える場合は、あまり先のことは考えず、出産から“半年後/1年後/2年後”くらいの現実的に見通せる期間で考えることをお勧めしています。そうすることで、保育園に希望のタイミングで入れた場合と入れなかった場合の両方をあらかじめ想定した複数の復帰プランを立てることができるので、会社と復帰プランを相談する際も『入れた場合はいつ復帰、入れなかった場合はいつ頃復帰したい』と具体的に復帰時期などの希望を提示できます」
《キャリア・プラン作成補助シートの作成はこちら》
▶ キャリア・プラン作成補助シート(在職者用)
ケース② 復帰後の勤務形態に悩んでいる
育児休業からの復帰後にどのような勤務形態を選ぶかも、仕事と生活を両立させるための重要な検討事項です。
福島さん
「この場面でも、『キャリア・プラン作成補助シート(在職者用)』のD-1、D-2、D-3が活用できます。復帰後の働き方について、フルタイムか時短勤務か、またフレックスタイム制や在宅勤務をどう取り入れるかなど、それぞれのメリット・デメリットを比較検討し、その結果を踏まえて希望する勤務形態を明確にしながら、今後のキャリアプランを具体化していく方法がお薦めです」
さらに、復帰に当たり上司や人事担当者との面談を控えている方には、同シートのA-3〈仕事を選ぶ上でのこだわり〉と、A-4〈価値観、興味・関心事項等〉の欄も役立つとアドバイスします。

福島さん
「出産する前と育児休業から復帰した後では大切にしたい価値観が大きく変わる方も多く、その変化を会社と共有しないままでは、上司や人事担当者が以前の価値観を前提に考えてしまい、配属先や業務配分でミスマッチが生じることがあります。事前にシートにまとめ復職面談時に改めて説明すれば、ミスマッチを防ぎやすくなります」
《キャリア・プラン作成補助シートの作成はこちら》
▶キャリア・プラン作成補助シート(在職者用)
ケース③ 中長期的な将来の働き方がイメージできない
復帰後の短期的な働き方だけではなく、将来の働き方を中長期で見通すことも大切です。相談者の中には「子どもが何歳になったらどのように働くのか」といった具体的なイメージを持てずに、モヤモヤを抱える方も少なくないと言います。
福島さん
「このような場合には、自分の価値観や強み・弱みを整理し、キャリアプランを明確にするためのシートである『キャリア・プランシート(様式1-1/就業経験がある方用)』が役立ちます。〈将来取り組みたい仕事や働き方等〉の欄には中長期的な目標を、〈これから取り組むこと等〉の欄には〈将来取り組みたい仕事や働き方等〉を実現するために必要な「資格をとる」など短期的な目標を記入します。できるだけ具体的に書き出すことで、将来の自分の姿をイメージしやすくなります。その際、先に『キャリア・プラン作成補助シート』や、職業経験などを記入する『職務経歴シート(様式2)』、持っている免許や資格を記入する『職業能力証明シート(様式3-1)』、これまでの学習歴・訓練歴について記入する『職業能力証明シート(様式3-2)』を使って自分の経験や強みを言語化した上で『キャリア・プランシート』に集約するとよりスムーズです」

《キャリア・プランシート(様式1-1)、職務経歴シート(様式2)、職業能力証明シート(様式3-1、様式3-2)の作成はこちら》
▶様式1-1キャリア・プランシート(就業経験がある方用)
▶様式2 職務経歴シート
▶様式3-1職業能力証明(免許・資格)シート
▶様式3-2職業能力証明(学習歴・訓練歴)シート
ジョブ・カードで実現するキャリアプランの再設計
福島さんのアドバイス例のように、ジョブ・カードを活用することで、育児休業明けの仕事復帰に向けた計画を、より具体的に描けるようになります。
ケース①では、復帰後の生活を見据えた複数のプランを立てることで、復帰時期の見通しを持てるようになりました。
ケース②では、キャリア・プラン作成補助シートをもとに勤務形態の希望や価値観を整理し、復職面談で上司や人事とスムーズにすり合わせができるようになりました。
さらにケース③では、仕事での目標を具体的に書き出すことで、将来のキャリア像をより明確に描けるようになりました。
このように、ジョブ・カードは単なる記入シートではなく、これからどう働きたいかを自分の言葉で整理してプランを描き、企業や関係者と共有するための実践的なツールといえます。
福島さん
「ジョブ・カードを活用した相談者からは、『子どもの成長とそれに伴う負担を見える化することで、将来希望する働き方ができるかどうかの見通しが立てられた』『仕事と育児を両立するためのプランを立てられた』といった声を多く頂きます。育児休業からの復帰という節目に、ジョブ・カードを活用して自身のキャリアを見つめ直してみてはいかがでしょうか」
お話を伺ったキャリアコンサルタント
福島美智子さん
国家資格キャリアコンサルタント。1級キャリアコンサルティング技能士。キャリアフローラ代表。人材会社勤務を経てキャリアコンサルタントとして独立し、キャリア相談歴18年、研修講師歴7年。3児の母でもある。行政・企業向けに女性の活躍推進やキャリア形成に関する研修を行うほか、個人のキャリア相談、キャリアコンサルティング技能士試験対策の指導、企業の採用代行、中学・高校・専門学校でキャリア授業を行うなど幅広く活動している。
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ジョブ・カードを作成しよう!
ジョブ・カードを作成することで、自分の強み・弱みや能力に気付くことができ、これまでの経験を踏まえた将来のキャリア・プランとそれに向かってやるべきことが描けるようになります。また、作成したジョブ・カードは就職活動や転職活動でも活用することができるようになります。
マイジョブ・カードのアカウント登録をすると、作成したジョブ・カードを保存し、いつでも修正することができます。
アカウント登録をして定期的にジョブ・カードの見直しや確認を行いましょう。
※アカウント登録後・ログインせずにジョブ・カードを作成した場合、保存するにはダウンロードしたうえ、アカウント登録・ログインしてアップロードする必要があります。
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